「同じものを繰り返す」リスニング学習の効果と基本ステップをご紹介

「英語を聞き取れるようになりたいけれど、何度聴いても頭に入ってこない……」そんな経験はありませんか？

リスニング力を伸ばすためには地道な練習が必要ですが、その中でも特に効果を発揮するといわれるのが「繰り返し聴く」学習法です。

多くの学習者が「同じ音声を何度も聴いて本当に効果があるの？」と疑問を持つかもしれませんが、実はこの繰り返しこそが英語リスニング力向上の大きなカギ。

この記事では、繰り返し聴く学習法のメリットや具体的な実践方法、学習効率を高めるコツを詳しくご紹介します。あなたもこの記事を読み終える頃には、きっと「今日から試してみたい！」と思うはずです。

同じものを繰り返し聴くメリット4選

さっそく繰り返し何度も聴くリスニングにはどんなメリットがあるのか見てまいりましょう。

①音声になじみやすくなる

英語の音を理解するには、まず「慣れ」が大切です。特に日本語と英語では発音体系やイントネーションが大きく異なるため、最初は英語のリズムや音の変化に戸惑うことも多いでしょう。

繰り返し同じ音声を聴くことで、「このフレーズが来たらこういう意味」というパターン認識が少しずつ形成され、頭の中で“英語の音”に対する抵抗感が薄れていきます。

②語彙とフレーズを自然に定着できる

単語帳で覚えた語彙やフレーズは、時間が経つと忘れてしまいがちです。

しかし実際の音声で繰り返し耳にすると、文脈の中で単語が使われるイメージが定着しやすくなります。たとえば「listen to music」というフレーズを何度も音声で聴いていると、次回同じ表現に遭遇したときに「こういうイントネーションでこう発音されるんだ」と自然に思い出せるようになるのです。

③聞き取れる部分が増えてモチベーションがアップする

最初に聴いたときは「ほとんど聞き取れなかった」と感じても、何度か聴いていくうちに「あ、このフレーズはわかる！」「ここで主語が聞こえる！」と、聞き取れる部分が少しずつ増えてきます。

自分の成長を実感できるとモチベーションが上がり、さらに学習を継続しようという意欲につながります。

④集中力が増し、細部に注意を払える

英語の音声を何度も繰り返して聴くと、回を重ねるごとに細部に意識を向けられるようになります。たとえば「短縮形」「連結音」「脱落」など、英語特有の音声変化に気づくことで、「あの部分はこう音が繋がっていたのか」という発見が生まれます。

これらの現象はシャドーイングやリピーティングを組み合わせるとさらにわかりやすく、発音も同時に磨かれていきます。

効果的な「繰り返しリスニング」の基本ステップ

基本的なステップは以下の5つです。

• まずは通しで聴く
• 気になる箇所を重点的に聴く
• スクリプトを確認する
• 再度音声を聴く
• スクリプトなしで最終確認する

ステップ1：まずは通しで聴く

最初はスクリプトなしで1回通し、全体の雰囲気をつかみます。「どんなトピックで何がテーマなのか」「知らない単語がどのくらいあるか」をざっくり把握する程度でOKです。

ステップ2：気になる箇所を重点的に聴く

1回目のリスニングで聞き取れなかったフレーズや発音をチェックしましょう。

2回目以降は、特にわからなかった部分に意識を集中させながら聴くようにします。

ステップ3：スクリプトを確認する

スクリプトを参照できる素材なら、わからなかった箇所をテキストで確認します。

ここで「どうして聞き取れなかったのか」を自己分析すると効果的です。

ステップ4：再度音声を聴く

スクリプトで答え合わせをしたら、もう一度音声を聴いて確認します。「この単語はこういう音の変化をしていたんだ」「ここで一瞬音が落ちていたんだ」と意識しながら聴くことで、実際の英語の音の特徴を捉えられるようになります。

ステップ5：スクリプトなしで最終確認する

最後はまたスクリプトを見ず、どの程度理解度が高まっているかチェックします。最初に聴いたときよりかなり内容を把握できるはずなので、達成感を得やすくなるでしょう。

「繰り返しリスニング」が有効な理由2選

①認知負荷が減る：自動化

繰り返し学習の効果は、認知心理学の研究でも示唆されています。Anderson（1982）の研究¹によると、人間は新しいスキルを習得するとき、最初は意識的な思考を多用しますが、繰り返し練習を重ねることで認知的負荷が減り、スムーズに処理できるようになるとされています。

これは「自動化（オートマティシティ）」と呼ばれ、言語学習の分野でもリスニングや発話において大切な概念です。

②理解できる内容が増える：インプット仮説

言語学者のStephen Krashenが提唱する「インプット仮説（Input Hypothesis）」²では、“学習者が理解できるレベルの少し上”の言語を大量かつ継続的に入力することが言語習得に効果的だとされています。

繰り返し聴き込みを行うことで、徐々に「理解できる部分」が増えていくのは、この理論にも合致します。

リスニング力アップに役立つ4つの学習法

ここからはリスニング力向上におすすめの学習法を4つ紹介していきます。

それぞれ「効く部分」が違うので、自分に合ったものを組み合わせましょう。

①シャドーイング

「シャドーイング」は、音声を再生しながら少し遅れて発話を真似する学習法です。リスニング力向上の中でも英語のリズム、イントネーション、音のつながりなどを体で覚えるのに適しています。

また、音声を処理する速度も向上することができるので、「ゆっくり発話してもらえるとわかるけど、早口になるとわからない」という方にもおすすめです。

ポイントは「理解可能な速度の音声を選ぶ」「無理せず追える程度に音を出す」こと。初心者ほど短めの音声から始めると良いでしょう。

具体的なやり方は以下の記事で紹介していますので、気になる方はぜひあわせてお読みください。

②リピーティング

リピーティングは、音声をフレーズや文章ごとに区切って一時停止し、同じ内容を繰り返し発話する方法です。

フレーズ単位で発声するので、シャドーイングよりもゆっくり音の形を確かめられます。文章を覚えていないとリピートできないため、「内容を理解する」力が鍛えられるのが特徴です。

③ディクテーション

ディクテーションは音声を聴き取りながら書き起こす方法です。

細かい音の聞き漏らしに気づきやすく、集中力を養うのにも効果的。ただし長文だとかなり時間がかかるため、短い英語ニュースやPodcastのクリップなどでの実践がおすすめです。

④サマリー作成

リスニングした内容を自分の言葉でまとめるサマリー作成も、理解度を深めるうえで非常に有効です。

ポイントは「英語でまとめても、日本語でまとめてもOK」ということ。英語力に余裕があれば英語で要約するのが理想ですが、難しい場合は最初は日本語でも構いません。

大切なのは「どの程度内容を把握できているか」を可視化することです。

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「繰り返しリスニング」を継続するための4つのポイント

リスニング力向上に必ず欠かせないのが「継続」です。どんなに効果的な学習も継続できなければ結果にはつながらないので、ぜひ以下のポイントを参考にしてください。

①学習目標を設定する

漠然と「英語ができるようになりたい」というよりも、「1ヵ月後にはTOEICのリスニングセクションで○点を目指す」「好きな海外ドラマを字幕なしで理解できるようになる」など、明確な目標を設定すると継続しやすくなります。

特に、数値でわかる「定量目標」と具体的にどんな風になっていたいかの「定性目標」の2つを設定するとモチベーションを保ちやすくなるでしょう。

②適切なレベルの教材を使う

あまりにも難易度が高い教材に手を出すと、ほとんど聞き取れずやる気を失う原因に。逆に簡単すぎるものだと成長を感じにくいので飽きてしまいます。

自分のレベルより“少し上”くらいの素材を選びましょう。

③進捗を可視化する

「理解度を数値化する」「聴き取れた単語数を記録する」など、できるだけ客観的に変化を捉える仕組みを作るとモチベーションが続きます。

最初は30％しか理解できなかった音声が、繰り返し学習で60％聞き取れるようになったら、大きな達成感を得られるでしょう。

④休息や気分転換も大切

集中力を保つために、適度に休憩を挟みましょう。

特に繰り返し聴き込みは精神的な負担も大きくなることがあります。長時間やりすぎるより、1回のセッションを20～30分程度に区切り、1日に複数回行うほうが効率的です。

まとめ：繰り返し学習で着実に成果を出そう

英語リスニングの上達に「魔法の方法」はありません。しかし、繰り返し学習こそが最も地道でありながら着実な成長をもたらしてくれます。

• 同じ音声を何度も聴くことで英語特有の音声変化に慣れる
• スクリプトを活用してわからない部分を徹底的に洗い出す
• シャドーイングやリピーティング、ディクテーションなどの補助的な方法を併用する

こうした学習ステップを踏めば、「聞き取れる範囲」が少しずつ、しかし確実に広がっていくのを感じるはずです。モチベーションを維持しつつ続けていけば、英語の“音”そのものへの理解が深まり、リスニング力は着実に伸びていくでしょう。

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参照元

1. Anderson, J. R. (1982). Acquisition of cognitive skill. Psychological Review, 89(4), 369-406. ↩
2. Krashen, S. (1985). The input hypothesis: Issues and implications. London: Longman. ↩